お料理便り|2024年09月09日(月)

2024年 秋のお献立より

 

吸物より「鶏と鰹節のおだし」

山間地の豊な自然に育まれた野菜と、風味豊かな鶏肉を贅沢に使い、丁寧に引いた出汁に鰹節の芳醇な香りを重ね、深みのある一椀に仕上げました。季節の野菜とつるりとした舌触りの蒟蒻麺を合わせ、心地よい温かさが体にじんわりと広がる、奥深い旨味をお楽しみいただける吸物でございます。

 

 

蒸物より「柚子芋」

縄文後期において、栽培される「稲」よりも先に人々の食卓を彩っていたのが「里芋」です。特に栃木県では、里芋に柚子を加えた味噌を塗り、炭火で香ばしく焼き上げた「いもぐし」が古くから愛されてきました。また、栃木県北部では「オヒマチ」と呼ばれる農作業の節目に行われる慰労会で里芋が提供されるほか、「もちなし正月」という伝統に従い、お餅の代わりに里芋が食されてきた家々もあります。このように古くから地元に深く根ざした里芋の優しい味わいを、さらに深めるために、酢と砂糖を煮詰めたガストリックと醤油で炊いた豚肉、蒸した里芋、そしてピュレ状にした里芋と味噌の餡を組み合わせ、栃木の「いもぐし」を参考にした一皿をご用意いたしました。柚子皮の佃煮を添えて、お楽しみください。

 

 

揚物より「飛竜頭」

「飛竜頭」は戦国時代に伝わった料理で、その名前はポルトガル語の音を当てて漢字で表記したものだとされています。この料理は、豆腐をすり潰して野菜と混ぜ、揚げた精進料理の一種で、「がんもどき」として馴染み深い料理です。豆腐は今日では身近な存在ですが、江戸時代にはその貴重さから、農民には作ることが許されず、主に武士や裕福な階層の人々のみが口にすることができる贅沢品でした。そんな貴重な豆腐に一手間加えた飛竜頭は、特別な日のごちそうとして親しまれていました。今でも季節の野菜を加えて揚げたてアツアツの飛竜頭は、現代でも魅力的な一品だと思います。

 

 

煮物より「とちぎ和牛のすき焼き仕立て」

とちぎ和牛の脂の旨味が際立つサーロインと、豊かな赤身の味わいを持つモモ肉の二種類を使用し、伝統的なすき焼きの風味を取り入れた煮物です。サーロインの豊かな脂の旨さと、しっかりとした噛みごたえが特徴のモモ肉を、控えめな甘さのすき焼きの割下で優しく火を通しました。肉の旨味とともに、炊き上げた野菜の調和をお楽しみください。

 

 

小菓子より「丁字のボーロ」

胃腸の健康促進や抗菌効果、さらには消化を助けるために古くから漢方薬にも利用される「丁字(クローブ)」を使った焼き菓子をご用意しました。独特の風味がありますが、胃腸を温める「おくすり」代わりとして、食事の締めくくりにお召し上がりください。

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